
2025年07月14日
憧れのオールドレンズがAFで使える!?
AF対応マウントアダプター徹底解説【2025年版】

独特のフレアやゴースト、とろけるようなボケ味、現代のレンズにはない温かみのある描写──。レンズ沼の住人たちを魅了してやまない「オールドレンズ」。
しかし、その多くはマニュアルフォーカス(MF)専用であり、「ピント合わせがシビアで、なかなか使う機会がない…」と防湿庫の肥やしにしてしまっている方も多いのではないでしょうか。
もし、そんな珠玉のオールドレンズたちが、最新ミラーレスカメラの顔検出や瞳AFを使って、オートフォーカスで撮影できるようになったとしたら?
そんな夢のような話を現実にする魔法のアイテム、それが「AF対応マウントアダプター」です。
一昔前は「邪道」とも言われたこのアイテムも、技術の進化により驚くほど高性能化し、今やカメラライフを豊かにする選択肢として確固たる地位を築いています。
今回は、AF対応マウントアダプターの仕組みから、主要メーカー(TECHART、Megadap、K&F Concept、SIGMAなど)の最新動向、そしてどんなレンズが使えるのかまで、徹底的に解説します。
AF対応マウントアダプターとは?その魔法の仕組み
そもそもマウントアダプターとは、カメラボディとレンズの「マウント」という規格の違いを吸収し、異なるメーカーのレンズを装着可能にするためのアクセサリーです。
その中で、さらに「レンズを物理的に動かす」または「電気信号を翻訳する」ことでオートフォーカスを可能にしたものが、AF対応マウントアダプターです。
主に2つのタイプが存在します。
1. ヘリコイド(繰り出し)型
ライカMマウントレンズのような、レンズ自体にAFモーターを持たないMFレンズをAF化するためのアダプターです。
仕組み: アダプター自体にモーターとヘリコイド(ネジのように回転して前後に動く機構)が内蔵されています。カメラからの「ピントを合わせて」という指示を受けると、アダプターがモーターでヘリコイドを動かし、レンズ全体を物理的に前後させることでピントを合わせます。

まさに力技ですが、この方式により、本来MFでしか使えない伝説的なオールドレンズたちが、
最新のAF機能で蘇るのです。
2. 電子接点・プロトコル変換型
キヤノンEFマウントのような、レンズ内にAFモーターを搭載した一眼レフ用AFレンズを、ミラーレスカメラで使用するためのアダプターです。
仕組み: アダプターに搭載された電子接点とCPUが、カメラボディ(例:ソニーEマウント)とレンズ(例:キヤノンEFマウント)の間に入り、両者の電気信号(プロトコル)を「翻訳」します。これにより、カメラボディはあたかも純正レンズが装着されたかのようにレンズのAFモーターを制御でき、オートフォーカスや絞り制御、手ブレ補正、EXIF情報の記録などが可能になります。
どちらのタイプも、その性能はカメラボディのAF性能、レンズの特性、そしてアダプターのファームウェアに大きく依存します。純正レンズと全く同じ速度・精度とはいかないまでも、静止画のスナップ撮影などでは十分に実用的なレベルに達しています。
主要メーカーと注目アダプター【E/Z/RFマウント中心】
それでは、AF対応マウントアダプター界隈を牽引する主要メーカーと、その代表的な製品を見ていきましょう。
【TECHART(テックアート)】 – MFレンズAF化のパイオニア

ヘリコイド型アダプターの先駆者であり、今なおトップランナーとして走り続けるメーカー。特にライカMマウントレンズをソニーEマウントやニコンZマウントでAF化する製品が有名です。
- 代表製品: LM-EA9 (ライカM→ソニーE), TZM-02 (ライカM→ニコンZ)
- 特徴: 小型パワフルなモーターと円形デザイン。LM-EA9は第2世代となりAF性能・静粛性が向上。迅速なファームウェア更新も魅力。
- 人気の組み合わせ: Leica Summicron 50mm F2, Voigtlander NOKTON classic 35mm F1.4など。アダプターの重ね付けで様々なオールドレンズをAF化する「合わせ技」も可能。
【Megadap(メガダプ)】 – 後発ながら高性能で市場を席巻

TECHARTの強力なライバルとして登場し、特にニコンZマウント用のアダプターで高い評価を得ているメーカーです。
- 代表製品: ETZ21 Pro (ライカM→ニコンZ), MTZ11 (ライカM→ニコンZ)
- 特徴: ETZ21 Proは薄型化とモーター性能を両立。ニコンの瞳AFや動物AF、ボディ内手ブレ補正にもしっかり対応。使い勝手への配慮も光ります。
- 人気の組み合わせ: Mマウントレンズ全般。特にZ fcやZ fといったヘリテージデザインのカメラとの組み合わせが人気。
【K&F Concept(ケーアンドエフコンセプト)】 – 圧倒的な製品群とコスパ

三脚やフィルターなど、カメラアクセサリー全般で絶大な人気を誇るメーカー。電子接点・プロトコル変換型のアダプターも手掛けています。
- 代表製品: EF-E AF II (キヤノンEF→ソニーE), EF-Z AF (キヤノンEF→ニコンZ), EF-RF AF (キヤノンEF→キヤノンRF)
- 特徴: 最大の魅力はコストパフォーマンスの高さ。安価ながら基本的な機能をしっかり押さえ、豊富な「EFレンズ資産」を活用したいユーザーの強い味方です。
- 人気の組み合わせ: Canon EF50mm F1.8 STM, Canon EF85mm F1.8 USM, TAMRON/SIGMAのEFマウントレンズなど。
【SIGMA(シグマ)】 – 純正に迫る信頼性とパフォーマンス

レンズメーカーとして名高いシグマが自ら手掛けるマウントコンバーター。その信頼性と性能は、他社の追随を許しません。
- 代表製品: MOUNT CONVERTER MC-11 (EF/SA→ソニーE), MC-21 (EF/SA→Lマウント)
- 特徴: 特に自社のArt, Contemporary, Sportsラインのレンズとの組み合わせで、ほぼ純正と変わらないAF性能を発揮。対応状況がLEDでわかる親切設計も魅力。
- 人気の組み合わせ: SIGMA 35mm F1.4 DG HSM | Art (EF), SIGMA 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM | C (EF)など。
AF対応マウントアダプターのメリットと注意点
最後に、この魔法のアイテムを導入する上での利点と、知っておくべき注意点をまとめます。
メリット
- 資産の有効活用: 防湿庫で眠っているMFレンズや一眼レフ用AFレンズが、最新カメラで一軍に復帰する。
- 表現の幅が爆発的に広がる: 数十年前の個性的なレンズから、安価で高性能な中古AFレンズまで、選択肢が無限に広がる。
- 最新機能の恩恵: 瞳AFや動物AFといった、カメラ側の便利な機能をオールドレンズで利用できる。
- コストパフォーマンス: 高価な最新純正レンズを買う代わりに、安価な中古レンズとアダプターでシステムを組むことができる。
注意点・デメリット
- AF性能は万能ではない: 純正レンズに比べ、AF速度や精度、特に暗所や動体追従性能は劣る場合があります。過度な期待は禁物です。
- 互換性の問題: レンズとカメラ、アダプターの相性によっては、AFが正常に動作しない、あるいは不安定になるケースも存在します。購入前にメーカーサイトで対応リストを確認することが重要です。
- バッテリー消費: アダプターのモーターやCPUを駆動させるため、通常よりバッテリーの消費が早くなる傾向があります。
- サイズと重量の増加: アダプターの分だけ、全長が長くなり、重量も増加します。
まとめ:過去と未来を繋ぐ、新たな写真の楽しみ方
AF対応マウントアダプターは、決して「純正レンズの完全な代替品」ではありません。
しかし、それは「過去の偉大なレンズ資産と、現代のカメラ技術を繋ぐ架け橋」であり、私たちの写真表現を何倍にも豊かにしてくれる、まさに魔法のアイテムです。
「あの頃、憧れだったレンズをAFで使ってみたい」
「安価にポートレート用の単焦点レンズシステムを組みたい」
そう思ったなら、ぜひこの奥深い沼の世界に足を踏み入れてみてください。
きっと、あなたのカメラライフは、今よりもっと刺激的で楽しいものになるはずです。